エレガントなスポーツウォッチ『Nomos Club Sport Neomatik 34 Gold』は理想的な万能腕時計
Nomos Club Sport Neomatik 34 Gold
ドイツの時計メーカー、ノモス グラスヒュッテ(NOMOS Glashütte)といえば、代表作の『タンジェント』や『オリオン』に代表されるバウハウス的なミニマルデザインの時計を思い浮かべるひとが多いと思います。以前は、シンプルなデザインで比較的良心的な価格の時計を堅実に届けているイメージでしたが、自社製ムーブメントを開発して以降は割とイケイケドンドンな感じで、ミニマリズムのデザイン作法は維持しつつもユニークな文字盤の時計ラインナップを増やしたり、突如アグレッシブなほど多くのカラー展開をしてファンを驚かせたりしてきました。
また、ほとんどキッチンタイマーのような、平面的で一切飾り気のない文字盤でありながら、ソリッドゴールド(18K)のケースと手掘りの装飾が施されたムーブメントを備えた『ラックス』は、いまや(2026年5月現在)定価が4,000,000円を超え、見た目は超ミニマルなのに実は超贅沢という極めて趣味性の高い時計まで出しており、数ある時計メーカーの中でも独自の立ち位置を完全に確立しています。
そんなミニマルで「静」のイメージの多いノモスの時計ラインナップの中で、最近とくに異彩を放っているのが「クラブスポーツ」ラインです。クラブ自体は昔からありましたが、2021年に自社製自動巻ムーブメント『DUW 3001』とメタル・ブレスレットとサンレイ仕上げの文字盤を備えた「クラブスポーツ」が発売されました。
「クラブスポーツ」は、これまでの「華奢で知的」な印象のノモスの腕時計とは一線を画す、堅牢で高品質なスポーツウォッチであり、巷ではロレックスの「オイスタパーペチュアルキラー」なんて囁かれたりもしつつ、ブルーやグリーン、ブラウンなどのカラー展開だけでなく、最初に出たかなり大きい42 mmの発売以降、39 mm、37 mmと細かいサイズ違いも展開、そして2024年11月にはなんと、34 mmというクラシック好きにはたまらないサイズの「クラブスポーツ」が満を持して発売されました(どこかの日本メーカーにも見習って欲しいものです)。
三色のカラー展開。Goldが最高
Photo courtesy of NOMOS Glashütte
34 mmバージョンのカラー展開は、ゴールド、ロゼ、パープルと、女性をターゲットとしている感はありますが、私はゴールドのサンレイ文字盤を見た瞬間、「これぞ理想的なGADAウォッチになる」(※GADA: Go Anywhere, Do Anthing)と、いつかこの時計をはめつつ金色のシャンパン片手に「我が時は来たれり・・・」とつぶやく自分を脳内に描きながら確信しました。
そしてこのほどようやく、『Nomos Club Sport Neomatik 34』(Ref. 755.SB)を私のコレクションに迎え入れました。シンガポールはシャンパンが高すぎてアレなので、モエのスパークリングワインをひとり傾けつつ、この時計に対する私の偏愛ぶりをお届けし、購入を迷っている方の背中を押しまくるとともに、小さめ腕時計の魅力についても語りたいと思います。
スポーティなのにエレガント
三連のステンレスブレスレットを備えている以上、それだけでスポーティな時計と言えるのですが、やはり34 mmという主張しすぎないサイズ感と、ゴールドとは言ってもギラついた金色ではなく、落ち着いたシャンパンカラーの文字盤が組み合わさることで、知的でエレガントな印象を否応なく、嫌味なくキラキラと振り撒いています。
また、サンレイ仕上げのため、光の当たり具合によって、シャンパンのように流麗な色味に見えることもあれば、金属的で硬質な表情を見せることもあり、その文字盤の表情が、12、2、4、8、10のフォントのミッドセンチュリー(スペースエイジ)な趣きや、鏡面仕上げのベゼルの輝きとも呼応して、どこか未来的なムードを醸し出しているような気もします。バウハウスの理念が時代を超越して未来まで飛んで行って現代に帰ってきたような、細部がお互いを高め合った実に優れたデザインと言えると思います。
また、サンレイ文字盤の光の入る方向と、スネイル仕上げ(細かいぐるぐる)の美しいサブダイヤルの光の入る方向が交差することで、日付表示もないシンプルな三針時計でありながら、文字盤全体により複雑な光の動きを与え、目を楽しませてくれます。サファイアガラスはごくわずかにドーム形状となっており、視認性も問題ありません。
ステンレスベルトの質感は、ロレックスのオイスターブレスレットには及びませんが、それでも十分高品質なもので、とくにバックルの裏の見えない部分まできれいな仕上げがなされています。
三連ブレスレットの真ん中のリンクが鏡面仕上げになっていることは、その細かい傷のつきやすさ、目立ちやすさに加え、スポーティな印象を弱めることからやや批判的な意見も見られ、私も購入前は「ぜんぶブラッシュ仕上げがの方がええのに」と思っていました。しかし手にとってみると、ことシャンパンゴールドの文字盤のこれに関しては、ブレスレットの中央リンクの輝きも、時計の全体的に上品な印象を形づくるのに一役買っている気がして、34 mmバージョンは鏡面仕上げで正解だと思います。
バックルも鏡面仕上げでピカピカだがすぐに傷付きそう
ただ、NOMOSロゴの刻印がなされたデプロワイヤントバックルは、外面の結構広い面全体がミラーポリッシュされており、普段仕事でキーボードを打つときなどは必ず下に来る部分なので、すぐに傷がついてしまうとは思います。バックルは両サイドをパチっと押して外すタイプです。ベルトはバックルにクイックリリース式バネ棒で止められており、バックルにある3つの穴で容易にベルト長さの微調整が可能です。
ちなみにケースバック(裏蓋)はムーブメントの見えるサファイアガラスも選べますが、私はそれほどムーブメントが見えることに拘らないタイプなので、数百ドル安いステンレスケースバックにしました。しかし、後述するように高い防水性を確保するために裏蓋もねじ込み式になっているせいか、NOMOSのロゴが時計の縦の中心線に対して水平にならずに傾いています(多分個体によって異なる)。神経質な私としては、ここにロゴは刻印せず「20ATM」と「SPORT」のように円周に沿って、同じフォントで「NOMOS Glashütte」 と刻印してほしかったかもしれません。
自社製ムーブメント「DUW 3001」とその薄さについて
搭載されている機械は、自社開発の自動巻ムーブメント『DUW 3001』です。青焼きのヒゲゼンマイや青焼きネジ、独自の3/4プレート、グラスヒュッテストライプ装飾などを備えた美しい機械です。
DUW 3001
Photo courtesy of NOMOS Glashütte
特筆すべきはやはり、3.2 mmという薄さ。この薄さがあるからこそ、時計の厚さを8.2 mmに抑えることができ、高い防水性能のあるスポーツウォッチにもかかわらず、袖にスッと収まる上品な佇まいを実現できています。やはりクラシックな大きさである34 mmの時計は、薄さも全体の調和を生み出す大事なファクターと言え、私がこの時計を「理想的なGADAウォッチ」と思う最も大きな理由は実はこの辺にあったりします。あと、潔くノンデイト(日付なし)であることも!
ケースは8.2 mmという薄さを実現
余談ながら、この性能で8.2 mmというのは結構すごくて、(すでに金欲しさに売却してしまいましたが)ロレックスのオイスターパーペチュアル 34 mm(10気圧防水)は、小ぶりなのはいいけど、高さ(厚み)が11 mmくらいあって、どうも全体のプロポーションのもっさり感は否定しがたいものがありました。ロレックスのオイスターパーペチュアルやデイトジャストは、36 mmがベストサイズだと信じています。
驚きの20気圧防水とねじ込みリューズ
もうひとつ、この時計が理想的な万能時計だと言える理由は、なんと20気圧(200 m)防水であることです。シャワーやプールでの水泳はもちろん、ダイビングでも着けたままで問題ありません。私はダイビングはしないし、さすがに海に入るときは岩にぶつけたりしたら嫌なので、時計は外すか、G-SHOCKにしますが、いつかリゾートホテルのプールサイドで、このシャンパンゴールドの輝きを煌めかせこますのが楽しみであります。
ねじ込み式リューズは34 mmだけ!?
嬉しいことにリューズはねじ込み式になっており、さらにリューズがきちんと締まっていないと赤く見えるようになっています。ねじ込み式のおかげで安心感がぜんぜん違います。10気圧防水でもプールでの水泳程度は問題ないのですが、やはりどうも水に漬けていると心配になってくるのは私だけではないと思います。
これも余談ですが、私の時計コレクションに20気圧防水の時計が一本は欲しいと思い、以前のブログで、「小さめダイバーズウォッチ」をいくつか紹介する記事を上げていました。そのときはたしかチュードア(チューダー)のブラックベイ 37 mmか、ノモスのアホイ 36 mmを有力候補としていましたが、まさかノモスからそれらよりさらに小さい20気圧防水のスポーツウォッチが出るとは! 個人的にどうしても回転ベゼルというものが好きになれないため、私のコレクションの防水時計枠はクラブスポーツでOKということになりました。
どんな季節・スタイルにも馴染む
スポーティでありながらエレガンスも備えたデザインにより、かなりいろいろな服装のスタイルに合わせやすいということも、理想的な万能時計、GADAウォッチである所以です。
Tシャツにジーンズの夏場から、スマートカジュアルな装い、なんならスーツでもOKで、海パン一丁で着けても様になるという守備範囲の広さを誇ります。また、シャンパンゴールドの文字盤は、春や夏の明るい日差しを受けて美しく輝きますが、秋や冬にはセーターの袖からちらっと控えめな光を放ち、あなたのスタイリングに小春日和のような温かみを添えることでしょう。そう、ゴールド/イエロー系って実は、グレー、ブルー、ブラウンという男の三原色のどれに対しても、差し色としてうまく機能する色なんですよね。
個人的にもっともこの時計が映える服装は、白のリネンシャツとベージュかアイボリーのコットンかリネンのスーツだという気がしています。ズボンのポケットに手を突っ込んだ定番のアングルの写真を自分で撮れないのですが、ノモスの宣材写真から上記のイメージに近いものがありました(モデルの手首の太さは16 mm)。かっこよすぎじゃないですか! まさに理想のGADAウォッチ!
このアングルの写真のうまい撮り方教えて
Photo courtesy of NOMOS Glashütte
SPECIFICATIONS
モデル名:Club Sport Neomatik 34
型番:Ref. 755.SB ケース素材:ステンレス鋼 ムーブメント:自動巻(パワーリザーブ 43時間) 文字盤:ゴールド、サンレイ(サンバースト)仕上げ インデックス:バー、アラビア数字(スーパールミノバ塗布) 直径:34 mm 厚さ:8.2 mm ラグトゥラグ:41 .5 mm ラグ幅:18 mm
防水性能:20気圧(ダイビング可) 価格:519,200円(裏スケは567,500円)(税込)
おまけ:34 mmは小さくない
最近ようやく多くのメーカーが、小さめの腕時計をラインナップに加えるようになりました。しかし、34 mmという数十年前までは紳士用時計の定番であったサイズは、まだまだ現代の多くの男性にとっては「小さすぎる」という印象を与えていると思われます。
しかし、決してそんなことはありません。私の手首は16.5 cmと細めであるとはいえ、もっと太い手首(17~18 cm)にも十分似合います。ゴリラ並みに太い手首(20~30 cm)を持っていない限り、34 mmという大きさは、手首を隠す時計の面積と腕の見える部分とのバランスを最も美しく成り立たせる大きさだと思います。
36 mmも良いバランスとは思いますが、やはり少し大きくて主張が強い。昔のドレスウォッチが男性用でも31~33 mm程度だったことを考えれば、34 mmは現代的な感覚からしても、洒脱でちょうどよい、控え目で毎日着けても飽きないGADAウォッチのための理想的サイズだと私は思います。
普段もっと大きい時計を身に着けていると、34 mmの腕時計を初めて手にした瞬間は「小さっ!」と感じますが(たくさんの大きな時計がショーケースに並んでいるところで手に取ると余計に小ささを感じてすこし怯むかもしれませんが)、これはすぐに慣れるし、だんだんと小さきものに対する愛着(偏愛)が湧いてきます。
ひとはなぜ腕時計にハマるのか
ひとはなぜ腕時計をわざわざ身につけるのか。時間を手軽に知るためだけなら、スマートフォンなど現代社会は時計で溢れています。かといって、自分の卑小さを覆い隠すためのステータスシンボルやマウンティングのためのツールであるべきものでも当然なく、2026年の今そんなつもりで身に着けていると、時代に取り残されたおっさんの痛々しさを自ら宣伝するようなもので、馬鹿にされていることにも気づかずに幸せな余生を過ごすことになって、他人からのリスペクトを徐々に失い、たとえ金はあっても寂しい老後を送る羽目になり、挙句の果ては孤独死することになるでしょう。
ではなぜか。それは結局のところ、腕時計が単なるファッション(装飾)ではなく、自分独自のスタイル(生き方、考え方、装い方)の表明としてのモノであり、そしてそれはまた、大量に押し寄せる情報と多様すぎる価値観が渦巻く現代社会において自分を見失わないための、ある意味タリスマンとしても機能するものだからです。
そんなタリスマンとしての腕時計選びがいつも愉悦を伴う行為となり、(私はそこまでしませんが)借金してまで高級時計を購入して人生を踏み外して沼に落ちたりするのは、それが尽きることのない物欲に急き立てられた行為だからでは決してなく、自分自身の内面を映し出す完璧な鏡を探す行為だからであって、それは同時に現代社会において常に隠蔽される超越性への接近を試みて失敗し続ける(時計コレクションに終わりはない)、極めて人間的な営みなのだと思います。そんな営みをこれまで15年ほど続けてきた私は、この34mmのシャンパンゴールドに、完璧な鏡の欠片を見出したような気がしています。
我が時は来たれり・・・!! チーン・・・。
※本記事には、NOMOS Glashütte公式サイトのプレス素材を使用しています。
※本記事で紹介したモデルの詳細は、ノモス公式ページ(Club Sport Neomatik 34)をご参照ください。