スニーカー素人がコンバースのChuck 70(CT70)を3足まとめ買いした言い訳

左から”Chuck 70 Canvas & Suede”、”Chuck 70 Formal Leather”、”Chuck 70”

定番モノ、良いモノ、贅沢なモノに拘るべき理由

人間40歳を超えると、服や靴、鞄、時計など、身に付けるものはいわゆる定番(最近の言い方ではアイコニック)なものばかりを買う傾向が徐々に現れてきます。「もう失敗したくない」「無駄遣いしたくない」という守りの姿勢なのか、ええ大人なんだから長く続くものの価値をわかっていると思われたいという自意識過剰のなせる業か知りませんが、ドレスシャツやスーツに至っては、「もうこの年になれば定年になるまで着る」などという言い訳をして、わざわざ仕立てたものしか着なくなります。ですが、この流行に左右されない定番のモノ、良いモノを愛するという価値観は、私のようなおっさんだけでなく、最近の若い人にも共有されてきていると思います。

三島由紀夫はかつて、軽佻浮薄な流行はすぐ消えてしまうが「一度すたれてしまったのちに、思い出の中に美しく残るのは、むしろ浅薄な事実」であるとし、軽佻浮薄であることのふしぎな生命力に着目、「どうでもいい、浅薄な流行に従え」と書きました。

しかし、2026年の今日の流行は、三島由紀夫が昔見たような、市井の人々が自由な感性で色々新しい組み合わせを試す中で生まれてくるフレッシュなうねりのようなものではなくなっています。消費社会が行き着くところまで来てしまい、記号消費といえどもある程度は地に足の着いた意識的な戯れであったはずの流行はいまや、有名ブランドやスターが新しい記号の組み合わせを神のように創造(思いつき)、それをSNS上のインフルエンサーが巫女のように民に伝え、民はその記号を盲目的にありがたがることが流行であるような時代です。そんな流行は人々の不安と結びつき、もはや流行というよりいつまでたっても治らない感冒のようなものとなっています。

こんな流行は、ふしぎな生命力を感じさせるどころか、非常に不健康というか病的です。先日もスウォッチがオーデマピゲとコラボしたプラスチックの懐中時計が発売されて、アホみたいな行列ができていましたが(転売屋も多いのでしょうが)、まるでゾンビの群れのようで、時計の出来はともかく、そんな流行に従った行動は「カッコ悪い」という言葉でしか形容できません。

幸いにして、そんなしょうもない流行への反動は、多少高くても定番のモノ、クラシックなものにこだわる若い人の出現という形で現れてきています。また、環境意識の高まりとともに現れた「スリフティング」という言葉を伴った古着屋の流行など、予想できないモノとの出会いを楽しみ、そうしたものを組み合わせてファッションを楽しむことは、創造性のある行為であり、それこそふしぎな生命力を感じさせるものといえるでしょう。

日本のコンバースと世界のコンバースは別物!?

というわけで前置きが長くなりましたが、創造性がなく生命力も衰える一方のおっさんの私にとって、浅薄な流行に従わず、定番のモノやクラシックなもの、贅沢なものに拘るということは、正しい人生への向き合い方であるということを、言い訳以上の、消費社会への抵抗という根拠のある行為であることを強調したうえで本題に入るのですが、「スニーカーの定番といえば?」と聞かれてスニーカー素人の私でも真っ先に思いつくのは、コンバースのオールスターです。

シンガポールでは、突然の雨なども多いので、普段はニューバランスのスニーカーをよく履いていますが、先日コンバースからジャックパーセルの90周年記念モデル『1935』のネイビーが発売されたというニュースが目に入り、「これええやん、買いに行こ」とコンバースショップに向かったところ、売ってない。そもそもジャックパーセル自体、白いものがひとつしか売ってなかったのです。店員に聞いたら、シンガポールにはこれしかないよ、とのこと。棚には定番のオールスターと、「Chuck 70」や「Chuck Lo」なる商品ばかりが陳列されていました。

どういうこと? と思ってGeminiに訊いてみると、スニーカー素人には驚きの事実が判明しました。どういうことかと言うと、日本のコンバースと、シンガポールのコンバースは別会社であるということで、これはさらにどういうことかと言うと、コンバース・ジャパンは伊藤忠商事が権利をもって商売しており、その他の世界のコンバースは米国ナイキ社の傘下ということらしいのです。

よって、日本とシンガポールでは、販売している商品が異なり、ジャックパーセル 1935は日本企画商品であり、シンガポールには売っていません。しかし、シンガポールの店内でやたらと押し出されている「Chuck 70」とはなんぞやと思ってさらに調べると、これはナイキ傘下のコンバースが、1960〜70年代のヴィンテージ・チャックテイラーを現代に復刻した(日本から見て)海外限定モデルとのこと。

さらに調べてみると、単なるポッと出の企画商品ではなく、普通の安価なオールスターよりも、しっかりした厚めのキャンバス生地を使用した「プレミアムなチャックテイラー」として、すでに定番商品化している模様。また、日本ではその入手困難さから結構レアもの扱いされており、「CT70」と呼ばれていることもわかりました。スニーカー好きには常識なのでしょうか、まったく知らんかった。

というわけで、シンガポールでジャックパーセルを買うのは諦めて、まずはChuck 70の一番ベーシックなものを買ってみました。

Chuck 70

普通のオールスターとの違い

したところこれがとても良い。全体的な印象として、まずキャンバス地は肉厚なものが使われていてペラペラ感はなく、現行オールスターの白と異なる生成り感があっていい感じです。

オールスターというと、昔は一日履いて歩き回っていると、踵がめちゃくちゃ痛くなったものでしたが(もしかしてこれは大昔の話?)、Chuck 70には分厚いインソールが入っているため、クッション性が素晴らしく、見た目はローテクスニーカーとはいえ、快適性も問題なさそうです。

とても分厚いインソール

オールスターのつま先のラバーは、小学校の上靴のような質感で真っ白で、どこかに擦ったら線汚れが付きやすいものでしたが、Chuck 70のつま先のラバーは、より硬くしっかりした手触りで、やや黄味がかった光沢のある高級護謨靴を思わせる質感で、汚れが付きにくそうです。靴の形状は、オールスターよりややでっぷりしたというか、わずかに幅広いです。

象徴的な赤いパイピングもやや光沢のある赤で、まるでケチャップを塗ったようでキュートです。

黒いヒールラベルがかっこいい

シュータン(べろ)の部分は無地というのもシンプルでよく、ブランド名の表示は、ヒールラベルにだけありました。これもオールスターのように、上靴みたいな白いラバーに黒文字ではなく、硬いラバーの黒地に白抜きで「Chuck Taylor」の名前と三つの星があるのが渋いです。

また、シューレース(ひも)もおそらくコットン製で、安いオールスターのような化繊ではないところもポイント高いです。

この昔から変わらないデザインのローテクスニーカーの原形のような靴は、現代の技術により快適性も取り入れ、もはや隙のない、とても完成度の高い靴だと思いました。Tシャツにデニムのようなラフな格好にはこれ以上ないほど完璧にマッチしますし、キャンバス地の生成り感のおかげで、夏場によく履くキレイめのリネンパンツなどに合わせても非常に良いです。

ただし、これは収縮性のあまりないキャンバス地でできたスニーカーなので、履く時はきちんとひもを外さないと履けません。暑いときに気軽に脱いだり履いたりしにくいのは仕方のないところです。

で、上の靴を買ったあと、Converse Singaporeのウェブサイトを見ていたら、Chuck 70の気になるモデルを2つ発見。無意識のうちに2つともポチってしまいました。

Chuck 70 Canvas & Suedeは夏の主役になりそう

Chuck 70 Canvas & Suede

こちらはホワイト基調でまとめられており、とても爽やかな印象。前方側面とヒールにライトグレーのスエードが貼られていたり、シュータン(べろ)などにライトブラウンのレザー(?)が貼られています。シュータンに何も書いていないのも良いです。

ヒールのラベルも白になっているのがいいし、なにげにプリントではないのも凝ってます。さすがプレミアムライン。

アウトソールには白い星が散りばめれていました。通常版のChuck 70は無地です。

これは限定版なのかわかりませんが、カジュアルでありながらもとても上品な印象で、ジャケット&ウールトラウザーズの下に合わせてみてもいい感じになると思います。

そしてもうひとつ買ったのが、、、

かっちり感とがっちり感が両立するレザースニーカー

Chuck 70 Formal Leather

全体がブラックのレザーになったChuck 70です。

すべて黒で統一されており、私は普段黒い服は着ないし、黒い靴もあまり履かないのですが、これは一目惚れしました。ローテクスニーカーのはずのChuck 70がブラックレザーをまとうことでいきなりかっちり感が増しています。ぱっと見ではダービーシューズかと思うくらいです。

もちろん分厚いインソールは快適です。シュータン(べろ)の裏はチェック模様が入っており、細かいところで心憎い演出が光ります。

上で紹介した2つのChuck 70との最も大きな違いは、これを履いたら5 cmは背が高くなるのではないかと思われるくらい、ミッドソールとアウトソールがごっつくて分厚いところです。

この意匠とレザーの固さのおかげで、履いたときの感触は、ローカットながらコンバースのスニーカーというよりブーツを履いているような感じでした。

アウトソールも通常版のものより、かなりグリップ力の強そうなものになっています。

スニーカーとドレスシューズとレインブーツが合体したような按配で、黒のポロシャツにライトグレーのパンツを合わせるという鉄板コーデの際、雨の日などはローファーの代わりに活躍してくれそうです。また、東南アジア各国やインドでは、トイレの床がわけあって濡れていることが多く、出張の際にレザーソールの革靴を履くのをためらうことがあるのですが、この靴ならまったく問題なく、ガシガシ使っていけそうです。

スーツには無理ですが、ブルーやネイビーのジャケットにグレーのトラウザーを合わせるような服装にも難なく合わせられます。繰り返しになりますが、東南アジア各国の出張時には本当に役立ちそうです(東南アジアでレザーソールの革靴を履いているひとは本当に少ないのです。たぶんトイレの床がびちゃびちゃだから!!!)。また、秋冬シーズンでは、クラシカルなゆとりのあるダブルプリーツのチャコールグレートラウザーズなどに合わせてみても渋いと思われます。

完成された新たな定番スニーカー

何十年も形が変わらないものを所有することは、定番の良いもの、贅沢なものを楽しんでいくという人生への向き合い方においての王道です。その意味で、たった2週間足らずの間に3足も買ってしまったとはいうものの、これらはこれ以上アップデートする必要のない完成されたオブジェクトであり、後悔はしていません。しばらくスニーカーは買わんでいいな。

ちなみにシンガポールでの価格(税込)は以下の通りです(※2026年6月現在。124円/ドル)

  • Chuck 70 $119(約15,000円)

  • Chuck 70 Canvas & Suede $109(約14,000円)※なぜか通常版より安い

  • Chuck 70 Formal Leather $169(約21,000円)

なお、私が買ったときはFormal Leatherがセールで$118と通常のChuck 70とほぼ同じ値段でした。

マレーシアでも売ってます。日本では買えないようなので、旅行や出張で来られた際にお買い求めになるといいんじゃないでしょうか。これ見たら普通のオールスターには戻れません。

参考文献

  1. 三島由紀夫『不道徳教育講座』(1959年)、角川書店、1995年

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