復刻パイロット時計『Hamilton Khaki Aviation Pilot Pioneer』は大人のツールウォッチに最適

私の腕時計コレクションの中の「ツールウォッチ枠」には2本の時計があります。ひとつは世界最強の腕時計、ツールウォッチの中のツールウォッチ『G-SHOCK Full Metal Gold』(後日レビュー予定)で、もうひとつは今回紹介するハミルトンの『Khaki Aviation Pilot Pioneer Mechanical(カーキ・アヴィエーション・パイロット・パイオニア・メカニカル)』です。

Khaki Aviation Pilot Pioneer Mechanical

ハミルトンはかつて真のインハウスメーカーだった

ハミルトンは1892年、アメリカ・ペンシルヴェニア州ランカスターで、複数の時計会社が合併することにより設立されたメーカーです。黎明期から鉄道時計で信頼を勝ち取り、のちに『Khaki(カーキ)』などの軍用腕時計でその名を世界に轟かせ、現在でもミリタリーウォッチで有名です。

ですがミリタリーウォッチ以外にも、独特の形状でエルヴィス・プレスリーも愛用した世界初の電池式腕時計『Ventura(ヴェンチュラ)』、1969年の世界初の自動巻きクロノグラフ開発への参画、1970年の世界初LEDデジタル時計『Pulsar(パルサー)』など、多くのユニークかつ時計史に残る時計を届けてきた名門です。

かつてのハミルトンは、紛れもなく純粋なインハウスメーカー(ムーブメントのパーツの製造・組立から一貫して自社内で行うことのできる時計メーカーのこと)でした。1947年のプロモーション映像『What Makes a Fine Watch Fine?』(下動画)では、全盛期のランカスター工場の驚異的な内製率を見ることができます。

精密加工機による部品製造はもちろん、極細のヘアスプリング(ひげゼンマイ)から、軸受用のルビーやサファイア、さらには潤滑油までも自社で製作・精製していたようです。現代ではパテック・フィリップなどの超名門でさえ、さすがに潤滑油は外部調達していると思われ、当時イケイケだった戦勝国アメリカの凄みを感じさせます。しかし、これらの事業は、敗戦国であった日本から巻き起こったクォーツショックによって後に大打撃を負い、失われていくことになります。

現在ハミルトンはスイスに本社を置き、スウォッチグループの一員になっています。今回紹介する時計のムーブメントも、ETA社(スウォッチグループのムーブメント製造会社)の機械の改造版を使っていますので、現代のハミルトンはインハウスメーカーというわけではなく、安価な時計から比較的リーズナブルな価格帯の高級時計を製造・販売しています。

1970年代の英国空軍向け時計をナイスなサイズで現代に復刻

『Khaki Aviation Pilot Pioneer Mechanical(カーキ・アヴィエーション・パイロット・パイオニア・メカニカル)』は、1973~1976年の間に製造された『W10』という英国軍兵士に支給されたミリタリーウォッチの復刻版です。

個人的に嬉しかったのは、最近の時計メーカーが昔の時計を復刻するときは、たいてい現代人の嗜好(もしくは『高い金を払うのだから大きく目立つ方がいい』というマウンティング市場に媚びる風潮)に合わせて、サイズを大きくすることが多いのですが、この時計に関しては、オリジナルの直径35 mmとほぼ同じの36 mmというベリーグッドなサイズで復刻してくれたことです。

なお、公式ウェブサイトの製品仕様には、「36 mm x 33 mm」という記載があって、この書き方は少し珍しく「直径が33 mm?」と誤解しそうになりますが、実際の各部分のサイズは以下の写真に示す通りです。ラグ幅は18 mm。

実際のサイズ

ケースとラグが一体化したころんとした樽型のケースがなんともいえずチャーミングで、クラシカルな雰囲気を漂わせるとともに、表側はすべてブラッシュ仕上げとなっており、ミリタリーウォッチ/ツールウォッチらしい、飾るところのない質実剛健さを感じさせてくれます。

また、後述する手巻きムーブメントのおかげもあり、厚みが約10 mmに抑えられていることも、私がこの時計をコレクションに迎え入れた理由のひとつです。ノモスクラブスポーツのレビュー記事でも書きましたが、時計の厚みというのは、腕に乗せたときの感触や見た目に対して非常に大きな影響を与える要素です。34~36 mmの時計はやはり厚み10 mm以下がもっともバランスの良いプロポーションを形成すると私は思います。径がもっと大きければ、厚みが13 mm程度あってもバランスは取れますが、小さめ時計の場合は13 mmくらいになると、どうも腕の上でしっくりこない感じがする私は少数派でしょうか。腕時計は腕に吸い付くような感じで座る方が美しい。

ボックス型の風防(ガラス)も入れて厚さ10 mm

独特のテクスチャーを持つマットブラックな文字盤

この時計を購入した決め手は、質実剛健でありながら控えめな大きさであることに加え、ハミルトンの他のカーキウォッチにはない、文字盤の独特な雰囲気が気に入ったこともあります。

粒子感のある肌理がありロゴや数字の塗装も立体的に見える

文字盤はパッと見はただのマットブラックですが、よく見ると、表面はざらざらした粒子感のある加工(塗装の仕方が独特?)が施されており、微妙な陰影を生んでいます。なんとなく大昔の計器類を想起させます。塗装されたロゴや数字はすこし立体感もあります。

HAMILTON”のロゴも、現行のロゴではなく、字体が斜めにしているところもレトロ感があって実に小粋な演出です。インデックスと針に施された夜光塗料はスーパールミノヴァですが、昔のラジウム塗料のような色合いとなっています。

これらの”昔風”デザインは、ヴィンテージ・ブームだからといって文字盤に最初からひび割れをつけて時計を古く見せようというような、一時期某メーカーがやっていたデザイン手法と同種のものでは決してなく、クラシック時計の忠実な復刻でありながらも現代の時計としてリファインされた確かな手触りとデザイン理由を感じさせてくれるものなので、最初から破れ加工が施されたジーンズを履くのは恥ずかしいと感じる年頃のオジサン諸君もそこは安心していただけることかと存じます。

ボックス型ミネラルガラスで数字が歪むのもまた一興

2019年の発売当初、まぁまぁの値段がするにも関わらず、風防がサファイアガラスではなくミネラルガラス(強化ガラス)であることに対する批判(というか買わない人の文句)がネット上で散見されました。しかし、あえて少し歪みの出るボックス型のミネラル(強化ガラス)にすることで、ヴィンテージ時計によくあるプラスチック風防のような温かみのある光の反射を再現しています。上の写真の風合い、とてもいい感じではないでしょうか。安っぽいという人もいることはわかってます笑

なお、ケースバックはねじ込みではなく、裏蓋を4箇所ネジで留めたものですが、10気圧防水となっており、タフなツールウォッチとして問題ありません。オリジナルのW10は、軍用なので確実な防水・防塵性能実現のため、裏蓋もない構造だったそうです(機械を見るには風防と文字盤を外す必要があるということ)。

80時間パワーリザーブを誇るムーブメントを搭載

ムーブメントは、ETA Calibre 2801-2をハミルトンが改造した(と言ってもなにしてるか詳しく知りませんが)手巻き Cal.H-50(21,600振動/時)。これのすごいところはなんといっても80時間ものパワーリザーブ能力です。完全に巻き上げれば3日以上放置しても動き続けます。ただし、完全にバネが解けた状態からだとかなりの回数、竜頭を巻き上げる必要があります。

あと、このムーブメントは巻き心地が結構良いです。ヌルヌルとしつつも重みがあって、奥の方でキリキリ音がします。

無骨ながらも落ち着いた大人のエレガンスを演出

ブラウンのスエードベルトに変えると本来の意味でスポーティな雰囲気に

私は庭で芝刈りをするときと、山登りをするときにこの時計を身に着けます(海やスキーはG-SHOCK Full Metal Gold。理由は後日)。大阪市で最も高い山、金剛山に何度も登ることを趣味のひとつにしていますが、その時に身につけるのは必ずこの時計です。

まったく本格的な登山ではないとはいえ、一応ちゃんとした登山靴は履きつつ、かといって化学繊維のカラフルな高機能ウェアは着ず、調子に乗ってバブアーのビューフォート(ブラウン)などを着込み、猟銃ではなくカメラを持ってハンター気取りで、ぜぇぜぇ言いながら山を登るのですが、その雰囲気にこの時計はぴったりハマります。ただし、購入時に付いてくるグレーのナイロンのNATOストラップはもひとつ合わない気がしたので、上の写真にあるブラウンのスエードベルトに付け替えることもあります。

Grey NATO strap

付属するグレーのNATOストラップの尾錠にはHAMILTONの刻印入り

私は普段ミリタリー系の服装は一切しませんが、もちろんそういうスタイルにグレーのNATOストラップは完璧に合います。

一方で、私が最後に強調したいのは、この時計、そのパイロットウォッチとしては小さいサイズもさることながら、全体がブラッシュ加工されてコロンとした形状のケースとマットブラックの陰影のある文字盤の組み合わせは、一切キラキラしたところがなく、そのおかげで無骨ながらも主張はしない控えめな趣きがあるため、休日の綺麗めコーディネートに添えることで、ともすれば鼻につくオシャレ感を中和させ、実に落ち着いた大人のエレガンスを纏わせる不思議な魅力を持っているということです。ミリタリー由来のパイロットウォッチ(パイロット以外のひとにはツールウォッチ)で、このような絶妙なバランスをもつ時計を私は他に見つけることができなかったことが(例えば昔のIWCのパイロットウォッチは無骨すぎで現行のはキラキラしすぎ等)、この時計を私のコレクションに加えた最大の理由です。

手首サイズ:16.5 cm / Wrist size: 6.5-inch

SPECIFICATIONS

モデル名:Khaki Aviation Pilot Pioneer Mechanical
型番:H76419931 ケース素材:ステンレス鋼 ムーブメント:手巻(パワーリザーブ 80時間) 文字盤:ブラック インデックス:アラビア数字(スーパールミノヴァ塗布) 直径:36 mm 厚さ:10 mm ラグ・トゥ・ラグ:42 mm ラグ幅:18 mm
防水性能:10気圧(シャワー、水泳可) 価格:129,800円(税込)※2026年5月現在

なお、今回紹介した黒い文字盤のほか、白と青もあります。黒はベルトがブラウンレザーのNATOストラップも選べます。

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/h76419931-khaki-pilot.html


前へ
前へ

スニーカー素人がコンバースのChuck 70(CT70)を3足まとめ買いした言い訳

次へ
次へ

【2026】海外出張持ち物リスト|忘れ物の心配なしで仕事の準備に集中できる【解説付き】